東京大学医学部 健康総合科学科 看護科学専修

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研究紹介

老年看護学教室

東京大学老年看護学分野は、2003年に真田弘美教授が初代教授として開講した東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻では比較的若い研究室です。2006年には、創傷看護学分野も併設され、老年看護学/創傷看護学分野となりました。現在は、ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座、社会連携講座アドバンストナーシングテクノロジーの協力講座として、臨床・教育・研究活動をともに展開しています。分野設立時は、小さな研究室でしたが、現在は協力講座も含めると教員14名、大学院生19名、学部生3名という大所帯の研究室です。所属している教員・研究員は看護学のみならず医学、農学、薬学、栄養学、生物学、工学、情報工学など様々な分野のバックグラウンドを持っており、多様な研究者が集まっている教室です。大学院には臨床経験豊富な看護師はもちろんのこと、学部からのストレートの学生や看護師以外の医療者、他分野から移ってきた者などユニークな人材が集まってきています。加えて、アメリカやオーストラリアの研究室との共同研究や、インドネシア、中国、ブラジル、メキシコ、スペイン、インドなどからの留学生や研究員を受け入れるなどグローバルにもオープンな研究室です。

研究室では、「Think big, Act smart, Enjoy research」のスローガンのもと、学生と教員が密接に連携しつつ各人の研究を進めています。環境としては、毎週の研究について濃密なディスカッション(年度の後半になるとほぼ発表、ディスカッションともに英語で行います)が行われるセミナーを基盤に研究活動を推進し、勉強合宿や他大学との合同研究会、海外の著名人による講演会の開催、国内外の学会への参加やセミナーの開催など研究成果の発信にも積極的に取り組んでいます。スポーツ大会やバーベキューなどのリクリエーションなどもあり、様々なイベントが目白押しで充実した環境になっています。加えて、臨床フィールドも多く、東京大学医学部附属病院はもちろんのこと、介護保険施設や地域など様々な場所で臨床・研究活動を行っています。

研究室での根本的な考えに「老化を成熟の過程の一つである」という概念があります。すなわち、生産性を重んじるのではなく、高齢者の経験と叡智を尊重し糧とする豊かな社会の実現を目指し、高齢者の尊厳の保持、心身機能の拡大、自己実現を図り、自立して社会へ参加する生活者としての権利を護ることが重要と考えています。それを体現化するキャッチフレーズとして、「”年をとるのも悪くないな”と思える社会を、一日でも早く実現する」ことを目標としています。その実現には、個人の生活を支援する看護師の役割が非常に重要です。そこで、創傷、糖尿病、失禁、栄養をキーワードに、看護学の視点から、幸せに暮らすことのできる高齢社会への貢献を目指しています。

高齢者のウェルビーイング向上を目標に、心身機能の維持と拡大を図り、自立と主体性を重視したニーズに着目し研究を行う中で、創傷を主軸とし、長年にわたって積極的にトランスレーショナルリサーチ(基礎科学の臨床応用を目指す橋渡し研究)を展開しています。分子生物学的レベルの基礎研究から産官学連携による機器開発を行い、臨床評価によりその効果を検証しエビデンスを構築します。それにとどまらず、その高度な看護技術を使いこなす人材育成も行い、研究成果がしっかりと社会へ還元され、広まる仕組みづくりへの貢献も念頭に置いています。このユニークなシステムを日本はもとより世界へと発信し続けるとともに、次世代を担う研究教育者の育成を行い、それらを通じた、老年看護学、創傷看護学に必要な重点技術を集結したグローバルな革新を目指しています。その先駆けとして、先述の、平成22年10月に、工学・理学のなどの自然科学基盤を、生活に起因した健康問題を解明するとともに直接介入を可能にする看護学的アプローチを作り出す学問体系を目指し、「ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座」を開設しています。さらに、平成24年12月に、臨床現場を基盤とした看護技術を創生する学問領域として、「社会連携講座アドバンストナーシングテクノロジー(ANT)」を開設しています。これらにより基礎系、看護工学系、そして臨床系からなる看護理工学の円環を加速させながら、看護学の発展に寄与しています。加えて、看護理工学の発展のため、英語並びに日本語で、分野初の入門書としての教科書も作成し、分野自体を国内だけでなく国外に向けても発信しています。

メカニズム

メンバー

ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座

ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座は、東京大学大学院医学系研究科・医学部へのモルテンによる寄附により2010年10月1日に設立され、工学・理学・情報学などの自然科学を基盤として、生活に起因する症候・症状の実態・メカニズムの解明に基づく介入が可能な看護学的アプローチの開発から、広く生活支援を行う方法論の確立を目指すライフサポートテクノロジー(Life Support Technology)を創生することを目的に2015年10月1日より二期目をスタートした寄付講座です。

人間の日常生活行動に起因する健康上の虚弱化を予防するため、その原因解明をベースに先端的なモニタリング・予防システムを開発する研究を進めています。現在、超高齢社会に向けて、治す医療から支える医療として、療養上の生活を支援するさまざまなケア技術が最重要視されています。その中で、1)糖尿病、がん、心疾患、認知症などの多くの疾患を抱えながら生きていく人々が、多様な機械システムと協調し、一人一人が最後まで、自己の最適健康に向けて自立・自律できるよう看護機器、予防機器の開発すること,2)新たなパーソナライズド看護技術開発研究支援体制を構築し、看護技術にイノベーションをもたらすこと、3)これにより今後の地域包括ケアシステムの根幹をなす住み慣れた地域・家庭での生活を支える看護学の構築につなげることについて,取り組んでいます。

システム

社会連携講座アドバンストナーシングテクノロジー

社会連携講座アドバンストナーシングテクノロジーは、臨床現場に立脚した新しい看護技術を開発し、患者さんに「我慢させない療養生活」の確立を目指して、東京大学医学部附属病院の診療科、看護部、東京大学大学院医学系研究科看護学専攻が協力して2012年12月に設立された講座です。医学の診断、治療技術は大きな発展を遂げており、看護技術もその変化に伴い進化していく必要があります。これまで、病院で働く看護師と大学で研究する看護師は、別々に活動することが多く、大学では研究を通じて看護の発展に寄与する方策を持っていても、病院から離れているために、これを還元することや病院での必要性を把握することが困難なことがありました。一方で病院では、新しい技術の創世が看護師の経験に依存する傾向があり、科学的プロセスを経た開発は極めて限定されてきました。その問題を克服し、さらなる看護技術の進化を目指して、病院の診療科、看護部、看護学専攻の橋渡しとなりチーム医療・研究を推進することを目指しています。

研究としては、病院で起きている看護上の課題に対して、大学の看護系教員と病院の看護師が協働して科学的なアプローチを試みます。大学の専門領域が協力することで、疫学調査や分子/遺伝子レベルの研究が可能になり、多次元的な手法によって新しい看護技術を開発いています。また、企業との協力によって、看護にまつわる医療技術や機器についての臨床評価を行い、早期の実用化を図り、実践の場のニーズに合った、新しい看護をスピーディに提供することを目指しています。

テクノロジー