東京大学医学部 健康総合科学科 看護科学専修

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カリキュラム

看護学概論2―社会で活躍する看護プロフェッショナル―

2016年10月6日
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2016年10月13日
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2016年10月20日
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2016年10月27日
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2016年11月8日
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2016年11月10日
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2016年12月1日
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2016年12月8日
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2016年12月15日
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2016年12月22日
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これまでの授業の詳細

2016年10月6日 横田慎一郎先生(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)

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「健康総合科学科では人間に対するサービスを学べる。駒場時代の僕にはとても魅力的に映りましたね。」

「看護師が使う医療情報管理システムは看護師にしか作れない。」

 

東京大学医学部附属病院の診療システムを一手に管理する基幹部門である企画情報運営部で特任講師をされている横田先生。膨大な数の患者さんに、最適な医療を間違えなく届けるためのITシステムを開発し、運用し、管理する実務を日々行いつつ、大量の診療データを活用した医療ビッグデータ解析に果敢に挑戦し、新たな看護の知を生み出す研究に取り組んでいます。医学部健康科学・看護学科(健康総合科学科の前身)を卒業後、病棟看護師として培った経験と、実務で身に着けたITスキルを統合し、新しい医療の在り方を想像しながら、未来の看護を形作っていく様子を熱く語ってくださいました。

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「患者さん1万人のデータを使って転倒リスク予測方法を作り、病院システムに実装すると、転倒する方が本当に減った。現場と研究の統合がこれほどしやすいところはない。」

 

 

 

2016年10月13日 清水陽一先生(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)

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<em「命には直結しないけれどもその人にとっては重大な問題。そういうものに介入するのも看護師の大きな役割。」

「我々の仕事は答えがない世界。答えがないところに、ひとつの答えを見出す。それによって、患者さんやご家族が抱える解決困難な問題を乗り越えられたとき、本当にうれしい。本当にやりがいのある仕事です。」

 

緩和ケアが必要ながん患者さんのために看護師ができることに全力で模索する清水先生。現在、国立がん研究センターに平成28年に発足した「社会と健康研究センター健康支援研究部」で研究員として活躍しています。もともと理科II類から理学部に進学して分子生物学を専攻しようとしていた矢先、がんを身近に感じる出来事が立て続けに起こり、将来そのような方の支援をする学問を学ぶために医学部健康科学・看護学科(現健康総合科学科)に進学を決めました。がん看護専門看護師として患者さんに最も近い立場で臨床を過ごし、最期まで人生を全うするための支援を模索しています。病院での活動にとどまらず、Maggie’s Tokyoプロジェクト(http://maggiestokyo.org/)や日本がん支持療法研究グループ J-SUPPORT (http://www.j-support.org/index.html)への活動支援など、多方面での活動について紹介してくださいました。現場に密着しながら、研究的視点を有する清水先生の視点から、今の緩和医療の課題と今後の展望に言及してくださいました。

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「患者さん1万人のデータを使って転倒リスク予測方法を作り、病院システムに実装すると、転倒する方が本当に減った。現場と研究の統合がこれほどしやすいところはない。」

2016年10月20日 秋山智弥先生(京都大学医学部附属病院)

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「看護は治療の根底にあるべき、人間の普遍的な営みではないでしょうか。」

「私たちの焦点は生活そのもの。その人がどう生きたいのかを全力で考えるのが看護師の仕事。」

 

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「看護師のやることで看護でないものはない。看護師が行うことはすべて看護なのです。チーム医療の中で、誰がやってもいいこと、誰にもできないことを看護師が行うのは、こういう理由からです。」

 

京都大学医学部付属病院で病院長補佐・看護部長を務める秋山智弥先生をお招きし、「看護の専門性を求めて」と題して、ご講義をいただきました。秋山先生のこれまでの歩みの中で構築してこられた看護の専門性について自問自答する日々を、ご自身の経験を交えて、ご紹介くださいました。看護の専門性を言葉で表現することは今も困難であることを率直に語り、しかしながら看護の重要性を疑う人は少なく、これを科学的に言葉にする努力がこれからも求められると指摘されました。京大病院という大きな組織の看護部のトップとして、看護師の仕事がいかに尊く、そしてインテリジェンスの必要とされる仕事であるかを多くの後進に伝えています。

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「看護の仕事は護ること、届けること、つなげること。患者を護り、安全な医療を提供し、専門家チームを調整する。」

 

 

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「看護は単体で購入できないサービスで、医療における重要なインフラストラクチュアです。だからこそ、看護は見えにくい。これをどのように見える化するのかを考えるのが管理者の重要な役割。」

2016年10月27日 大屋麻衣子先生(厚生労働省医政局看護課)

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「看護政策は時代に合わせて変わり続けなければならない。今は数の問題への対応が急務であるが、同時に質の高い看護師が育つことも求められる。」

 

 

超高齢化を迎える日本で、医療、特に看護師の教育に関する政策に携わっている大屋麻衣子先生。人と関わる仕事として看護に魅力を感じ、理科II 類から医学部健康科学・看護学科(現健康総合科学科)に進学、看護師・保健師・助産師の資格を得て、助産師として命の誕生に立ち会ってきました。出生数が減り、高齢出産も増えていく中で、助産師を目指す学生が十分な経験を積むことができる教育システムをどのように構築するのか、目下の課題の一つです。また、高齢化に伴う医療職不足を解消するための多様な教育課程の整備など、多様な視点から動いている医療政策や行政についてご講義いただきました。

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「医療行政は、様々な価値観や考え方が存在する場。それらの調整も看護技官が担える重要な役割。」

「2年間の教養課程で様々な分野の人と出会い、広い視野を獲得できることが東大看護の強み。」

2016年11月8日 中村奈央先生(公益社団法人日本看護協会 看護開発部)

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「社会の中で求められる看護の在り方を一人一人の看護職が考え、実現していくことが大事。」

 

 

人々の健康を高めるためには何が必要なのか。目の前の患者さんだけへのケアが充実していればよいのか。看護の持つ大きな影響力を、もっと多くの人のために広げるにはどうしたらよいのか。本学健康科学・看護学科(現健康総合科学科)を卒業後、助産師として臨床で実践する中に沸いた疑問にこたえるべく、中村先生は現在日本看護協会で政策的な観点から看護界全体を俯瞰する立場で奮闘しています。会員約70万人を要する日本看護協会は「現場のニーズ」に最も近い組織。ここで上がってきたことを政策に反映させるための戦略を練り、大きな社会変革を起こすため、膨大なデータや専門家との協働を通じて、診療報酬制度や法の改正まで踏み込んでいく過程やその間に生じる様々な葛藤を学生たちに伝えてくださいました。

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「私たちは制度・政策面で看護職を後押ししたい。」

 

2016年11月10日 野寄修平さん(東京大学大学院老年看護学分野)

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「看護には唯一の解は存在しない。同じ情報を与えられても違う見方がある。それぞれの見方に対応できる技術が開発できるはず。」

 

看護学と工学を融合させてイノベーションを起こす!看護の現場で多く行われる看護技術をより進化させ、患者さんを我慢させない療養生活の実現に向けて研究に取り組んでいます。理科I類から進学した健康総合科学科を平成27年度に卒業し、現在修士課程1年生として研究のイロハを学びながら新しい看護技術を創出しようと日々奮闘しています。実習で感じた様々な患者さんの”我慢”を解消できないのか。最も患者さんに近い立場に立ったときに、まだまだ看護技術は進化できるはず、と考えモノづくりを得意とする老年看護学教室で卒業論文を書きました。研究内容は「仮想超音波プローブによる末梢静脈留置カテーテル留置部位の選択技術の開発」。超音波画像装置と画像処理技術を組み合わせることで、看護師が簡便・正確に静脈留置に適した血管を選択するための支援技術を開発し、その功績が認められて平成27年度東京大学総長賞を受賞しました。看護ケアを検討するうえで重要な「アセスメント」の進化の夢を語り、非侵襲性、非拘束性、リアルタイム性、といった看護学に求められる要件を満たす新たな技術開発に取り組む様子を紹介してくださいました。

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「サイエンスである看護学は知識をストックする。今日学んだことが明日のケアにつながる。サイエンスと現場がダイレクトにつながっている。」

 

2016年12月1日 若命真裕子先生(東京大学医学部附属病院看護部)

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「患者さんが元の生活に戻れるように、必要なことを生活の中に取り入れていく支援をする。これは看護師にしかできない。とてもやりがいのある仕事だと感じるところです。」
「死にたいという患者に本当に何もできないのか。それを考え続けることで、その人に必要な支援が出てくるんですね。

 

文科3類から医学部健康科学・看護学科(現健康総合科学科)に進学され、以来、厚生労働省医政局看護課への出向を除き、東大病院一筋で看護の現場で働いていらっしゃる若命(わかめ)先生にご講義をいただきました。整形外科病棟、手術室、外科系混合病棟などの外科系看護を経験されていらっしゃいます。日勤や夜勤など、普段知ることのない看護師の現場の仕事の実際をわかりやすく語ってくださいました。また、厚生労働省では看護職員確保ラインを担当し、就業支援専門官として活動なさっていました。日本全国にいる看護職員を国の財産として捉え、積極的に活用する制度の開発についてご紹介くださいました。

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「患者さんのためになることをひたすら考える。考えて行った看護が結果として返ってくる。考える力を磨くことが患者さんへの看護をよくすることにつながる。それを共通の知としてまとめることがこれからの看護を作る。」

 

2016年12月8日 笹川恵美先生(東京大学大学院母性看護学・助産学分野)

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「国際保健の現場で日本の看護師・助産師が求められている。過度な医療介入を避け、女性の産む力、赤ちゃんの生まれる力を引き出す人間的な出産を追及することの魅力を伝える。」

 

国際保健の現場では、確実で丁寧な仕事をする日本の看護師・助産師の活躍できる場が多い。笹川先生は、幼少の頃から海外での医療活動に憧れており、青年海外協力隊・助産師隊員としてメキシコへ派遣されて以降、途上国で活躍し続けています。国連ボランティア看護師として派遣された太平洋の孤島ナウルでは唯一の日本人として活動したり、独立行政法人国際協力機構(JICA)専門家として中米エルサルバドルではシャーガス病(サシガメによる原虫感染症で心疾患や妊婦への悪影響が大きい)の防止に取り組んでいらっしゃいます。2017年からはエルサルバドルで、JICAの草の根パートナー型事業を通じた助産分野の国際保健活動「人間的出産プロジェクト」を主導する予定で、日本の助産師が得意とする、母児の力を引き出し、女性に優しい産科医療・助産ケアを世界に普及します。また、笹川先生は「キューバのプライマリー・ヘルスケアは、これからの日本が学ぶべきことが多い」と語ります。例えば、医療費を掛けない予防医療・感染症の撲滅・医療従事者による国際貢献の実施・保健人材の育成などはキューバ・モデルとして有名で、他国に例を見ない成果を挙げている。豊富な国際経験を若い学生に魅力的に伝えてくださいました。

 

2016年12月15日 仲上豪二朗先生(東京大学医学部健康総合科学科老年看護学教室)

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「日常生活を送るうえでできる創傷は看護学が予防する。

 

 

 

医療が生み出す病気に立ち向かう看護学の挑戦褥瘡ゼロを目指して」と題して、当学科の仲上豪二朗講師が授業を行いました。病院は病気を治しに行くところですが、実はそこで行われている医療行為そのもので発生してしまう皮膚の創傷である「医療関連機器圧迫創傷」に研究者としてどう立ち向かうのか。分子生物学や工学の知識を取り入れながら、臨床看護学を基盤において研究を進める看護理工学の枠組みで、臨床看護師や医師とコラボレーションしながら新しい予防策を提唱する研究の筋道が示されました。人工呼吸器のマスクでできてしまう圧迫性の創傷を防ぐには、複雑な顔の形状に沿ったマスクのデザインが必要です。しかし、一つ一つマスクをオーダーメイドするわけにはいきません。そこで、マスクを使用する方の顔を三次元スキャンしてデータを取り込み、マスクと顔に生じる間隙を埋めるフィッティングデバイスを3Dプリンターで創出することで防げるのではないか、と考え、研究が実施されています。このように、新しい技術を看護学に積極的に取り入れる姿勢が今後新しい看護技術の開発に必要であることが強調されました。
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「看護学研究は医療を変え、社会を変え、世界を変える。褥瘡ゼロを目指して看護学研究の力を見せていきたい。」

 

2016年12月22日 大河内彩子先生(横浜市立大学大学院医学研究科地域看護学分野)

 

「看護を選んで後悔はありません。」

 

 

 

文科3類から健康科学・看護学科(現健康総合科学科)に進学された大河内先生、哲学や社会学、人類学など他分野と融合による看護理論の創出と活用について、文系出身ならではの複層的視点を生かした質的研究を例としてご講義いただきました。個人から地域社会までを対象に「ドヤ街」「気になる子ども」「子どもの貧困」「健康格差」などに関する地域看護学研究に受講者も興味津々の様子でした。対象者の痛みや苦しみを理解して生きる力につなげたいという思いを抱きながらも、看護学研究者としての喜びや楽しさなど、看護の魅力をお伝えいただきました。

「楽しくて、いつも瞳がキラキラしていられる看護学研究者。」